【コラーゲン生成に不可欠なビタミンC】
前回は「ビタミンB群」である水溶性ビタミンについてお話ししました。水溶性ビタミンは,タンパク質の代謝に関与しており,不足すると効率よくタンパク質を作ることができません。そのため,毎日の食事の中で摂取する必要があります。
【ビタミンB群と運動の関係性】タンパク質合成を高める
タンパク質の合成を高めるのは,ビタミンB群と呼ばれる水溶性ビタミンの働きが大きいです。ビタミンB群は補酵素として働き,タンパク質の代謝に貢献します。筋トレでタンパク質を摂取する人や激しい運動をする人は積極的に摂取しましょう。
【筋タンパク質の合成を促すビタミンB6】筋肥大に必要
水溶性ビタミンであるビタミンB6は,補酵素として働きます。とくにアミノ酸の代謝として作用しており,筋タンパク質を合成するうえでは欠かせません。運動を多くする人でタンパク質量も増えている方は,ビタミンB6も合わせて摂る必要があります。
今回は水溶性ビタミンでお話しできなかった「ビタミンC」について説明します。
ビタミンB群が低下すると筋肉の元であるタンパク質の合成能が低下しますが,ビタミンCが低下すると,身体能力の低下や筋萎縮を認めることが明らかになっています。
それは,筋繊維を繋いでいるコラーゲンの構成にはビタミンCが不可欠であり,不足すると筋肉自体が萎縮するためです。
他にも腱(アキレス腱)や筋膜にもコラーゲンが含まれており,ビタミンCの摂取は必須となります。
近年ではマルチビタミンといったサプリもあり,ビタミンの摂取はトレーニーにとっては必須な栄養といえます。
この記事について
・ビタミンCとは
・ビタミンCの働き
・1日の摂取量
・ビタミンCが不足すると
ビタミンCとは
アスコルビン酸とも言われます。
多くの哺乳類は体内でブドウ糖からビタミンCを生成することはできますが,人や一部の動物は作ることができないため,食事から摂取する必要があります。
作用
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・強い抗酸化作用
・結合組織(コラーゲン)の形成
・皮膚のメラトニン色素の生成を抑制
・毛細血管,歯,軟骨を正常に保つ
・ストレスへの抵抗性
このように,ビタミンCは様々な働きをしてくれます。とくに皮膚・筋肉・骨といった体を構成する組織を作ってくれる源になるため,是非とっておきたいです。
ビタミンCの働き
さきほどの作用を深掘りしていきます。
強い抗酸化作用
私たちの体は日々呼吸で「酸化」するようにできています。この活性酸素は体内の酵素によって分解することができます。
ですが,ある条件によって活性酸素は増えてしまい,分解よりも活性酸素の量が増えてしまうことで体に悪影響が起こります。その条件のひとつが「運動」です。とくに筋トレのような激しいトレーニングによって,通常より多く酸素を使うことで体は活性酸素が多くなります。
そして,体が酸化した状態は「疲労」をもたらします。
疲労が起きるのは活性酸素による酸化ストレスで,神経細胞が破壊されるからと考えられています。
ビタミンCは,活性酸素を分解促進してくれる「抗酸化作用」があることで注目されています。
そのため,筋トレを行うトレーニーで「疲れが取れない」という方はビタミンCの摂取をおすすめします。とくに毎日行っている人は要注意です。疲労により筋トレのパフォーマンスが下がっていることもよくあることです。
活性酸素
毎日呼吸によって酸素を取り込み,食べ物からエネルギーを作り出すときに使用しています。この過程で酸素の一部が変化し,活性酸素となります。活性酸素は,普通の酸素に比べて細胞を酸化させてしまう力が強いのが特徴です。
結合組織(コラーゲン)の形成
ビタミンCは,筋膜(筋繊維をまとめる膜),腱を構成するコラーゲンとして不可欠な栄養素です。そして私たちの骨格筋(筋肉)にはビタミンCが多く含まれており,体を構成する上では大切なものです。
このような報告もあります。
ヒトと同様に体内でビタミンCを合成できないマウスを用いて,血中や筋肉のビタミンCが減少すると筋肉にどのような影響があるかを調べたところ,ビタミンCの不足期間が長くなると筋肉を構成する筋線維が細くなり,筋肉の重量が減少,再びビタミンCを与えると回復することがわかった。筋力や自発的活動量などで評価した身体能力も同様にビタミンC不足期間が長くなると低下し,再びビタミンCを与えると回復した。
ラットでの報告ですが,他にも人で行った研究があり「筋肥大とビタミンC」「疲労とビタミンC」は相関があるという研究はいくつもあります。
以上の報告のようにビタミンCが不足することで,筋肥大への妨げになることがわかります。
筋肥大を目的としている方は,ビタミンCの摂取量を増やすことが重要となります。
1日の摂取量
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推奨量1日:100mg
日本人の推定摂取量は80mg前後。
推奨量からすると少し不足しているため,足りていない人はサプリメントから摂取するようにしましょう。
ビタミンCが不足すると
壊血病(かいけつびょう)
出血性の障害が体内ので生じる病気でビタミンC欠乏状態が数週間から数カ月続くと症状が出現します。筋肉痛や関節痛も起こりやすくなります。
皮下出血
毛細血管が弱くなり,皮膚の下で毛細血管が出血しやすくなります。皮膚が青っぽくなるのが特徴です。
骨形成不全
骨がもろく弱いことから骨折しやすくなり,骨の変形を来す病気です。骨の形成にも関与しており,不足すると骨にも影響がでます。
貧血
ビタミンCには鉄分や銅といったヘモグロビンの合成を高める効果もあります。不足すると貧血になりやすいといった特徴もあります。
他にも…
・肌のシミやくすみ
・ケガの治りの遅れ
・疲労感
・免疫力低下
・生活習慣病
・早期老化
ビタミンCは意外と私たちの生活と切っても切り離せません。ビタミンCのサプリメントはどこにいってもたくさん販売しています。価格もかなり手頃なため,是非飲みましょう。買わないのはもったいないですよ。
※タバコを一本吸うことで25mgのビタミンCが消失してしまいます。喫煙する人は意識して摂取するようにしましょう。